危険なビーナス

主人公は男性で獣医さんをしています。ある時、疎遠だった半血兄弟の弟の嫁だという女性が訪ねてきます。夫が失踪したので一緒に見つけて欲しいと・・・もう何十年も会っていないし半血だからと迷いましたが、一緒に見つけることにします。

東野圭吾氏の作品は複雑に何個かの問題が提起されることが多い中、今回の作品は至ってシンプルで分かりやすかったです。弟の魅力的な嫁の正体、兄弟の共通の母の事故死とされていた謎の死の真相など最後にすべて分かります。題名の割に危険ではありませんでした。(笑)

金魚姫

夏らしい表題と表紙の絵に惹かれ購入しました。屋台で取ってきた金魚がたまに女の子になって主人公の生活が変わっていくというお話です。そんな現実離れした話・・・と多少軽く見て読み始めましたが、読んでいくうちにハマってしまい、寝る前に読み始めたが気が付いたら3時になっていて焦って寝たなんてこともあった本です。

怖くて、せつなくて、可愛くて、それでいて遠い昔と現在の奥行も感じられる本です。突然何千年も前の怖い話になるのでビックリしますが、人の思いというのは何千年経っても生き続けるのだとつくづく思いました。

主人公もブラック企業で堕落した日々を送っていましたが、ある日亡くなった人が見えるようになって、その人から声をかけられ、亡くなった人の思いを残された人に伝えるうちに仕事であるお仏壇のセールスの売上げが伸びたりします。何のために生きているのか分からなかった主人公の生活も金魚の世話をしなくてはならないという使命感から徐々に変化していきます。主人公の人としての成長も感じられる本でした。

写真の朝顔は今年自宅のベランダで種から育てたものですが、ハートの葉っぱと、金魚の尾のようなヒラヒラした八重の花びらが可愛い朝顔です。蛇足ですが、金魚は様々な品種改良を行ってあんなに特徴のある姿になったのだそうです。朝顔も江戸時代に様々な品種改良を行って色々な変わり朝顔ができたそうです。うちの朝顔は西洋朝顔ですが・・・・金魚と朝顔ってちょっと似ていますね。

イスラム教徒の頭の中

皆さんはイスラム教についてどの程度ご存じでしょうか?イスラム教というとアラブ人というイメージがありますが、アラブと言っても20か国以上あり全てイスラム教ということでもなく、全体の80~90%がイスラム教徒(ムスリム)だそうです。イスラム教も大きく2つスンニー派とシーア派に分かれ、スンニー派の一部がイスラム過激派となっており、ムスリムの1%にも満たない過激派の活動が大多数のスムリムのイメージとして定着してしまっています。

この本では、結婚などの女性の事情とビジネスなどの男性の事情が多く書かれています。イスラム教はお酒を飲まない。一夫多妻制。未婚の女性は顔をベールで隠し、結婚は一種の商談でマハルという結婚金をいくらにするかということから始まるらしいです。女性は未婚だと半人前と判断され、結婚して子供を産んでそして男の子を生んで一人前とされるのだそうです。男性は4人まで妻を持つことができ、妻と子供を扶養する義務を持ちます。妻が多くいて(マハルの支払は多額なので多いほど裕福)子供も多くいる事(特に男の子を多く持つこと)が男として生殖的にも社会的にも出来る男とされるのだそう。

驚きエピソードが書いてありました。一人しか妻を持たない社会的地位が高い男が今のままで満足なのでということで1人しか妻を持たなかったら、その妻が「夫は第二の妻をもらうべき」と訴えを起こしたそうです。理由は第1に子供の問題。夫は地位が高いのでより多くの男子をもうけなければないが出産に伴う女性の苦労は並大抵ではない。自分としては2~3人の子供を産むことが理想なのだが、夫はもっと多くの子供を持つべきなので、他の妻を迎えもっと子供を産ませたら良いという。2つ目の理由は話し相手となる友人がほしい。外部の人との交際もままならないのだからせめて内部に自分と対等に付き合える友人がほしいという。3つ目の理由は夫ほど地位のある者のテントに妻が1人しかいないのは威厳を損なうし、一切の家事が1人の妻にのしかかっている状態は妻にとっても夫にとっても不自然だからとのこと。判決の結果は、夫はラマダーン(断食月)の終わりに第二の妻を迎えよ。ということでした。

妻からそんなことを言い出すなんて日本人にとってはビックリ発言ですね。でも夫は妻を迎えたら、どの妻にも平等に扱い扶養する義務が生じます。ですから未亡人が生じにくくなり、子供が産めない女性や他に妻がほしくなった夫からも別れなくてすむ未亡人救済制度とも言われています。日本のように不倫が盛んになったりすることもなく、愛人や妾などというのもなくなるある意味健全に社会的に保障されて妻という座に居続けられるということです。

その他にもアラブ商法は得して得とれ。という精神だったり、神にさえ嘘をつかなければ人に嘘をついても良いとか、返事はYES。できるとしか言わないがその努力はしない。とか、なかなかビジネスでは手強そうです。なんか日本人が考える常識はイスラム教にしてみれば常識ではないという事が良く分かった本でした。

話し方の教科書

お借りした本です。先日出張した際の新幹線の中で一気に読みました。この本によると声は洋服と同じでTPOに応じて変えていくべきでそれは練習によって習得できるそうです。大勢の前で話す時は高い声、電話で話す時は低い声など。具体的には、腹式呼吸をする。共鳴させる。活舌よくする。だそうです。腹式呼吸と活舌は何となく分かりますが、共鳴させるってちょっと分かりづらいですよね。

共鳴とは、肺に送り込んだ空気を吐くとき声帯を通過させ、その時声帯が震えて空気を振動させると原音(声の源)が生まれます。この原音を口腔や鼻腔、頭蓋骨内の腔で増幅させることが共鳴だそうです。共鳴トレーニングのやり方も載っていて、人差し指と中指を鼻先に触れて口を閉じて「ムー」と言って指先が振動するのが共鳴です。その高さの音が一番聞き取りやすい声らしいです。低音の聞きやすい音の見つけ方は同じく指を喉において震える音域で、高音の聞きやすい音の見つけ方は同じく指をおでこに添えて見つけるようです。

その他にも間の取り方や抑揚の付け方なども書いてあります。一番良い練習方法は朗読だそうです。話すのに自信のない方はこの本を読んでみると、とても具体的なので分かりやすいと思います。

困難な成熟

困難な成熟?この本を目にした時、どういう事??という疑問が生じました。以前読んだ「たのしい不便」を手にした時と同じような感覚です。どうしても気になってしまい買ってしまいました。

この本は物事を考える際の本質が何なのかと考えるのに役立ちます。読んでいると、そうか。そういわれてみるとそうだな。と納得できます。自分が今まで過ごしていた当たり前の基礎事項が、このような考えがあるのかと非常に勉強になります。

例えば、表象の非対称性。正義と悪者の表現ですが、大抵、正義は個体性豊かに描かれ、悪者は個体識別できないように平べったく記号的に描かれます。悪者側についても個人史的な精査を行った場合、悪者側の主観的な正当性というのが生まれてしまいます。ですから、正義には個体性豊かで悪者は記号的に描かれ表象の非対称性がおこるのだそうです。

他には、労働とは何か?ということ。生物は消費からはじまりました。生物が生きてこれたのは、自然界からの圧倒的な贈与があったからです。人間の消費する量が自然からの贈与分を超えたから、人間はこれを制御する必要がありました。それが労働です。仕事でもモノを作り出す部門と管理部門があります。実際にモノを作り出す部門よりなぜか何も仕事をしないで管理する部門の方が給料が高かったりします。それは仕事の本質が制御だからだそうです。

どうですか?かなり新鮮な考え方ですよね。その他にも様々なメッセージが書かれています。物事の本質を見るためのヒントになるのではないでしょうか。

日本でいちばん大切にしたい会社

あまりにも有名な本なので名前だけでも知ってる人も多いのではないでしょうか。この本は法政大学の教授が全国6000社以上を訪問し、いい会社には共通点があると気が付きます。第1部では経営者が心すべき5人の人に対する使命と責任を掲げています。第2部では、いい会社として5社を厳選して紹介しています。5人に対する使命と責任を果たすための行動のことを、経営と定義しています。5人の1番目は社員とその家族を幸せにすること。2番目は外注先や下請先の社員とその家族を幸せにすること。3番目は顧客を幸せにすること。4番目は地域社会をしあわせにし活性化させること。5番目は株主、出資者を幸せにすることです。そして、業績ではなく、継続する会社を目指すべきだと言っています。業績や成長は継続するための手段にすぎないとも言っています。企業を継続させることこそ社会的使命だそうです。

第2章では、多くの会社を訪問した著者がこれぞ、いい会社だと思う会社を5社紹介しています。その中の2番目に紹介した寒天メーカーの会社は48年間増収増益で50年間一度もリストラをせず、100年カレンダーを作り遠くを見通す経営をしてきました。寒天の市場は決して成長マーケットとは言えません。実際寒天の生産量は右肩下がりです。でもこの会社は寒天をベースにしながらも時代に合った付加価値をどんどんつけながら、同業者と戦わない経営を行い商品価値を高めています。経営方針は3つ「無理な成長は追わない」「敵をつくらない」「成長の種まきを怠らない」ということ。

ここでビックリエピソードが書かれていました。この会社は「かんてんぱぱ」という商品を売っており、この一種類を大手スーパーが「是非うちで売らせてほしい」と言ってきました。北海道から九州まで展開している大手スーパーの注文を受ければ、1年間で何億円、何十億円にもなりますが、それをすべて断ったといいます。それは経営方針の一つ「無理な成長は追わない」という信念に基づいた判断でした。景気や流行を追うと好況のときには設備投資などにお金をかけたり人を雇ったりします。しかし不況になるとそれが過剰投資になりリストラしたり商品の値段を下げたりして苦しむからだといいます。私もどちらかというとこのような信念を持っていますが、通常売上は来るもの拒まずなのではないでしょうか。それをブームはいつか去る。その時のダメージを考えると売り上げも取らない方が良いという経営判断はなかなかできるものではありません。なんだか凄い会社でした。その他にも、リスクのある仕事は、あえて断るなど、短期の業績に着目せずに100年の長いスパンで会社を発展させていこうという理念は「おみそれしました」という感じでした。

たのしい不便


この本を見たとき、「たのしい」と「不便」は相反する言葉な気がして、妙な違和感を覚えたのです。そうしたら、とても気になってしまって、つい買ってしまいました。この本は毎日新聞の記者が書いた本で、不便を積極的に経験した体験談を書いたものです。月毎に不便を実践していってその体験や感想を綴っています。実践した不便は、会社まで電車を使わずに自転車で通勤する。とか、エレベータを乗らずに階段を登っていくとか、この本の帯にも書いてありますが、それらを実践することによって体重は減り、お金は残っていくのです。なぜなら今までより運動量が増え体が引き締まり、通勤手当が浮くのでお金は残るということでした。

でも、この本はその程度のもので終わりません。はじめは自分ひとりで不便を実行して家族を巻き添えにしないという決意で始めます。ところが、家族が協力するようになり、畑を借り野菜を栽培するようになるころから家族(特に子供たち)が協力し始めます。しまいにはカルガモを使った無農薬の米を栽培し始め、素人の稲作に地域の人も見かねて協力し始めます。その道のプロ(農家の人達)も巻き込み大昔不便だったころの地域の人々達が助け合って生きていた時代のような経験をします。

なんだかとても温かい気持ちになる本でした。不便だった時代は隣近所みんなで協力しあって生きていました。でも現在は便利になって特に協力しあわなくても個体でも生活できるようになっています。隣の部屋に住んでいる人の顔も知らないというのも珍しくありません。その分人々の交流や家族の繋がりも希薄になってきたのではないでしょうか。そう、昔は個体では生活できず協力しあわなければ生きていけない世の中だったのです。便利さと希薄さは実は表裏一体なのだということを思い知らされました。とても良い本です。お薦めです。




表紙の模様がキレイだったので購入しました。主人公はとても繊細な神経を持ち合わせた人です。心の中の気持ちを丁寧に細かく表現しているので、人の感情とはこんなにも違うものなのかと思いました。例えば、”運が良い”という事項を私みたいにラッキーだと好意的に思う人もいれば、何故私が選ばれた(不幸な事項からは選ばれなかったのか)と思い、それに対して申し訳ないという気持ちでいっぱいになる人もいるのです。一般的には誉め言葉でも、相手はそれに傷ついたり・・・特に外見に表さない人は全く分かりません。

そんな繊細な神経を持ち合わせた主人公のアイはアメリカ人の父と日本人の母の裕福な家の養子でアイ自身はシリアからハイハイを始める前に両親の元にやって来ました。もちろん容姿が両親と異なることから幼い時に養子だということを知らされていてそれでも深い愛情で両親に育てられた子供でした。そんなアイには、ミナという親友がいて、彼女は日本の伝統的な家業がある家に生まれた裕福な家の子供でした。アイは血の繋がりに憧れ、ミナは血の繋がりを疎ましく思っている面もあります。

そんな二人が大人になり、ある事件が起こります。アイは血の繋がりを重んじてミナは血の繋がりをそう重んじていないからの決断が二人の意見に亀裂を生じます。アイはミナを許せないと思ってしまいます。そんな時、アイの夫のユウが言います「理解出来なくても、愛し合えうことは出来ると、僕は思う。」この本で一番印象に残った言葉です。読み終わった時、何かを乗り越えた気がしたそんな本でした。

ベターッと開脚




何年か前の12月にシルク・ドゥ・ソレイユを観に行ったときに、あまりの体の柔らかさとしなやかさに感動して、私もあんな風に(いやあそこまででなくても)体が柔らかかったらなぁと思いました。過去にピラティスやヨガもやりましたが、私は教室の中でも一番体が硬く、前屈などしようものなら、「足が長くて届かない~」などという寒いギャグを言うしかありませんでした。体が硬いというのは、私のコンプレックスでもありました。

この本を手にしたとき、ほんまかいな。。。と半信半疑で手に取り、パラパラと本をめくったら、60代や70代の方が開脚してベターっと手を前についている写真が載っていて、子供のころから硬かったから今からでは遅いと思い込んでいた私の心に望みの光を与えたのです。そして半信半疑でとりあえず、本を購入しました。

そして、半信半疑で読み始めました。その内容は、ここに書いてある体操を毎日4週間行えば、誰でも開脚でベターっと肘まで手が付くようになるというものでした。恥ずかしいのですが、私は開脚では手のひらが床に付くのがやっとで肘を曲げることも、まして、肘が床に付くなんて夢のまた夢です。私にできるだろうか・・・不安がよぎりました。

本を読み進めてみると、2つの基本体操の他に1週間毎にメニューが変わる体操が1つ入ります。つまり基本体操2つと週替わりの応用体操1つの組み合わせです。体操1つは片足30秒ずつの1分。3つやっても3分。準備を入れても5分あれば十分です。これならできそう。やってみます!

不思議な会社に不思議なんてない




この本はMBS(明治ビジネススクール)の友人がお薦めの本として貸してくれた本です。昨日、一気に読みましたが、途中何度も目頭が熱くなりました。

この本は島根県にある建設業の会社の社長が書いた本です。島根県は、県民所得が全国で下から二番目の46位(最下位は隣の鳥取県)しかもこの二県は人口流出が激しく島根県69万人鳥取県57万人と両県あわせても大田区と杉並区を合わせた人口しかいないそうです。建設業はバブルの時が最も売上が高く、以後減り続けています。小泉内閣の時に公共工事が削減され、それ以後他の建設業界も以前のような勇ましさはありません。それなのにこの会社は平成26年の時点でバブルの時の1.8倍の売上があります。なぜなのか?

それは、この会社は以前は他の設備業者同様に大型の公共事業やゼネコンの工事が中心でした。ところが2001年から一般家庭を対象にした小口工事を始めたのです。小口工事件数の7割が5万円以下である受注にもかかわらず、全体の売上げの45%を占めるまでになったのです。この小口工事は2006年から島根県と鳥取県の一部で「住まいのお助け隊」としてテレビCMを出してからは認知度が高まりさらに受注が増えました。

このCMの登場人物はその会社の作業員らが作業服姿で「たすけたい♪たすけたい、あなたの住まいを助けたい♪」と言って行進するそうです。建設業界に不況の嵐が吹いたとき、このまま公共工事やゼネコンの大型工事に依存したいたのでは将来がない。と一般家庭を対象にしたサービス業に転換したのです。それも感動的なサービスの提供を心掛け従業員の研修を徹底し、従業員を大事にし独自の文化を築き上げたのです。とても心が温かくなる本でした。是非実際に読んでみることをお薦めします。