年末調整と確定申告

年末調整はサラリーマンなどの会社等で勤務する人が会社から渡された「給与所得者の扶養控除等申告書」と「給与所得者の保険料控除等申告書」を記載し、控除証明書などを添付することにより確定申告をしないで、年税額を確定する方法です。

サラリーマンなどで主たる給与以外の給与がある場合は、確定申告をすることにより、税金が還付される場合があります。メインの給与ではなく、サブの給与の源泉徴収票を見て下さい。右の真ん中よりやや上に源泉徴収税額という欄があります。その欄に金額の記載がある場合は、税金が還付される可能性があります。また、年の中途で辞めてその後就職していない人も、勤務先から源泉徴収票を取り寄せて、源泉徴収税額の記載があれば、税金の還付を受けることができます。

還付される金額は、まず、源泉徴収票の支払金額(2箇所以上ある場合は足した金額)を国税庁のホームページ http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/pdf/000.pdf

を参考に7ページを見て自分の給与所得控除額を計算し、先ほどの支払金額から給与所得控除額を引いて給与所得を求めます。そこから源泉徴収票に記載してある所得控除の額の合計額を引いて、課税所得金額を求めます。課税所得金額に先ほどのHPの7ページの税額表により税金を計算します。

計算した税額と源泉徴収表の源泉徴収税額(2箇所以上ある場合は足した金額)を比較し、源泉徴収税額-計算した税額=還付される金額 となります。

国税庁のホームページにアクセスすればそのくらいの確定申告でしたら、簡単に作成することができます。是非お試し下さい。

生命保険契約や損害保険契約等に基づく年金に係る判例

相続又は贈与等に係る生命保険契約や損害保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いが、最高裁判所の判決により変更になりました。

以前は遺族の方が年金として受取る生命保険契約等については、一度相続税が課税され、さらに年金として受取る時に、所得税(雑所得)として年金収入金額から保険料等を差し引いた金額が課税されていました。

今後はまず、各年の年金収入金額を所得税の課税部分(雑所得)と非課税部分(相続税の課税対象となった部分)に分けて、課税部分のみ年金収入金額から保険料等を差し引いた金額が雑所得として課税されます。

では、過去の年金についてはどうなるのでしょうか?これについては、平成17年分から平成21年分までの納め過ぎとなっている所得税が還付されます。これについては黙っていても貰えるものではなく、確定申告をしている年については、更正の請求という手続きをし、確定申告をしていない年については、自ら確定申告(還付申告)をする必要があります。

詳しくは、国税庁のホームページ http://www.nta.go.jp の「保険年金の所得金額の計算のためのシステム」で計算をすることができます。更正の請求書や確定申告書の様式もダウンロードすることができます。

みなし取得費の特例

今年も残すところ3か月を切りました。年々短くなっていると感じるのは私だけでしょうか?今回は株を持っている方に意識してもらいたい情報です。

平成13年9月30日以前に取得して引き続き保有していた株(上場株式等)を、平成15年1月1日から平成22年12月31日までの間に譲渡して、確定申告を行う場合、「実際の取得価額」と「みなし取得費」を比較して、いずれか有利な方を選択して、確定申告をすることができます。

みなし取得費とは、平成13年10月1日における価格の80%相当額(1円未満切上)の事を指します。国税庁のホームページを参照して下さい。http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/denshi-sonota/kabushikijoto/kabuka/01.htm

注意点は、平成13年9月30日以前に取得した同一銘柄の上場株式に取得価額に応じて、みなし取得費と実際の取得費を混合して適用することはできません。同一銘柄の株を平成22年に譲渡した場合には、みなし取得費か実際の取得費を選択することになります。

また、データはほとんど平成13年10月1日の価格なのでその金額に80%を乗じた金額がみなし取得費になります。

<例>A株を平成12年6月に5,000,000円で取得して、平成22年10月7日に8,000,000円で譲渡しました。みなし取得費は6,000,000円だった場合
通常の計算であれば8,000,000円-5,000,000=3,000,000円(本来はこの金額から譲渡費用を控除できます)ですが、みなし取得費を採用すると8,000,000-6,000,000円=2,000,000円(本来はこの金額から譲渡費用を控除できます)に対して税金が課税されることになり、100,000円※の節税となります。この規定は今年限りの規定となります。そろそろ処分したい株でみなし取得費を採用できて、その方が有利である場合は、この2カ月ちょっとで検討してみてはいかがでしょう。
※(3,000,000円-2,000,000)×10%

住宅取得等資金の贈与に関する非課税特例

直系尊属(父母、祖父母など)から住宅取得等資金贈与を受けた場合の非課税特例が拡充されました。

平成21年1月1日から平成22年12月31日までに贈与を受けた人は1,500万円までは贈与税が課税されません。

平成23年1月1日から平成23年12月31日までに贈与を受けた人は1,000万円までは贈与税が課税されません。

注意点としては、贈与を受ける人の贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下の人について適用されます。合計所得金額が2,000万円を超える人が平成22年中に直系尊属から贈与を受けた場合は500万円の非課税特例となります。

自動販売機活用による節税の廃止


不動産賃貸を営む事業者が自動販売機を設置することで消費税の節税をはかるというスキームがありました。内容は改正前のところを見て下さい。まず、不動産賃貸業(居住用物件)を営もうとする設立事業年度に「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出します。そうすることで、資本金等に関わらず消費税の申告をすることになります。設立事業年度にアパートを建築し、自動販売機を設置します。自動販売機の売上は消費税法上課税売上となりますが、アパート建築に係るコストのうち消費税部分は消費税の経費(仕入税額控除)となり、多額の還付を受けることができました。例えば、自動販売機による収入が30万円(消費税15,000円)でアパートの建築コストが7,000万円(消費税350万円)だった場合、15,000円から350万円を控除した金額が-348万5千円となり、その金額を還付させることができました。そして、設立2年目は自動販売機売上にかかる消費税のみ納付し、設立3年目に入る前に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を所轄税務署に提出し、3年目は免税事業者となるのです。

その節税スキームが使えなくなりました。改正後のところを見て下さい。まず改正前を同じように設立1期目に「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出した場合、多額の消費税の還付を受けれるのは上記のとおりです。ただ、3年目が始まる前に「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出ができなくなりました。一度課税事業者を選択した場合には、3年間は課税事業者が強制されます。また、簡易課税の選択についても3年間は選択できません。そして、3年目の消費税は過去3年間の平均課税売上割合を用い消費税を計算することになります。その結果、1年目の還付を受けた多額の消費税は殆んど戻すことになります。

FXに係る税務

FXとは外国為替証拠金取引のことですが、その所得は通常、雑所得として総合課税の対象になり、確定申告が必要になります。税率はその人の他の所得との関係によりますが、15%~50%(所得税5%~40%で住民税が10%)となります。

ただし、くりっく365(取引所為替証拠金取引)にすれば、どんなに高額所得者であっても一律20%(所得税15% 住民税5%)となります。高額所得者の場合、50%から20%の税負担に軽減でき大変有利な節税となります。

くりっく365取引を開始するためには、くりっく365の取扱会社に口座を開設して、証拠金を預託して取引を開始する必要があります。くりっく365の取扱会社はインターネットなどで簡単に検索することができ、手続きも証券会社に口座を作る程度のものです。

総合課税の税率が所得税で10%以上である人はくりっく365を利用すると良いでしょう。

グループ法人税制2


カテゴリー税務にて前回、グループ法人税制の大枠を説明しました。今回はグループ法人税制の対象となるグループをお話します。
上の図でA社(親会社)がB社(子会社)に100%出資をしている場合、グループ法人税制の対象となるグループに該当します。それでは、個人である甲さんがC社に100%出資をし、D社にも100%出資をしている場合はどうでしょうか?これはA社とB社のように直接出資ではなく、間接出資ですが、これについてもグループ法人税制の対象のグループになります。つまり、完全支配関係のある法人で発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係がある場合をいいます。

グループ法人税制の概要は前回お話しましたが、A社とB社の関係(法人による完全支配関係法人)とC社とD社の関係(個人による完全支配関係法人)では、取り扱いが1つだけ違ってきます。

それは、寄付金の取り扱いです。法人による完全支配関係法人の場合、取り扱いは前回お話したとおり、支払う方は損金不算入、貰う方も益金不算入ですが、個人による完全支配関係法人の場合には、グループ法人間でない場合の取り扱いと同じになります。つまり、支払った方は、寄付金の損金不算入限度額の計算により限度額まで損金算入で、貰った方は全額益金算入となります。この部分は注意が必要です。

グループ法人税制

平成22年税制改正でグループ法人税制(100%子会社等に対する税制)が整備されました。
主な改正点は下記のとおりです。

① 資産の譲渡損益の課税の繰り延べ・・・これはA親会社からB子会社へ簿価2,000万円の資産を時価3,000万円で譲渡した場合、今までは3,000万円-2,000万円=1,000円部分は税金が課税されていましたが、その部分については、課税がされないというものです。その反対取引も損失になりません。つまり、A親会社からB子会社へ簿価2,000万円の資産を時価1,500万円で譲渡した場合、今までは2,000万円-1,500万円=500万円は譲渡損として損失になり、税金を安くする効果がありましたが、それも出来なくなります。グループ外に譲渡されるまでは譲渡益も譲渡損も認識されないことになります。

② 受取配当の全額益金不算入・・・これは子会社から親会社に配当金が支払われた場合、もらった配当金から控除負債利子を控除した部分だけが益金不算入(収入とされない)とされましたが、控除負債利子に関係なく、全額収入とされません。税務上、収入とされないというのは、その部分に税金がかかってこないということになります。

③ 寄付金課税の見直し・・・寄付金はもらった方が益金になり、税金が課税されましたが、もらった方も益金不算入(収入とされない)し、支払った方も損金不算入(費用とされない)ことになりました。

多くの医療法人は親族が経営するMS法人(メディカルサービス法人)を有している場合がありますが、医療法人が持分の定めのない社団医療法人や財団医療法人の場合にはグループ法人税制の対象になりませんが、医療法人が持分の定めのある社団医療法人の場合、このグループ法人税制の対象になりますので注意が必要です。

相続税法施行令33条3項

前回、相続税法66条4項の考え方でお話しした持分の定めのない社団や財団に寄付したら必ずみなし贈与の規定が適用されるわけではなく、相続税法施行令33条3項の要件に該当すれば、みなし贈与は課税されません。次の要件がみなし贈与が課税されない4要件です。

1.その組織運営が適正であるとともに、親族等の割合が1/3以下とする旨の定めがあり、かつ、実行すること。
2.法人に財産を贈与した者や役員やその親族等に対して特別の利益供与を与えないこと。
3.定款等で解散した場合に残余財産が国等に帰属する旨の定めがあること。
4.その法人に法令違反や帳簿書類に仮装隠ぺい行為がないこと。

1番目の基準と3番目の基準は主に形式基準であり形式を満たすことによってクリアされる要件です。4番目の要件は例えば社会保険診療報酬不正請求(法令違反)や税務上の重加算税案件(仮装・隠ぺい)にあたります。2番目の要件が一番争いが多い、特別の利益供与の問題です。この一般的な考え方は通常、従業員に行わないような行為を特別な人だけに行うことをいいます。ですから、福利厚生規定で従業員に行っている行為であれば、役員等に対して行っていたとしても特別の利益供与に該当しないこととなります。

相続税法66条4項の考え方

相続税法66条4項はいわゆる「みなし贈与」の規定です。この概念は広いのですが、なかなか理解しにくい規定です。一つ例を挙げるとすると、下記のような例があげられます。

<例>
Aは資産家ですが、将来の相続税が心配でなりません。そこで、持分の定めのない社団医療法人を設立しそこに10億円の寄付行為を行います。事業年度の中途ですと、10億円は法人の所得として課税されますが、設立時だと課税されません。それをつかって無税で医療法人を設立し、Aの子供に理事長になってもらい無税のまま財産を実質的に相続させるというスキームがありました。持分の定めのある社団医療法人ですと、いずれ出資額の10億円に含み益が追加され相続税が課税されることになりますが、持分の定めのない社団ですと、持分がそもそもないのですから、どこでも課税されない。つまり、無税で実質的に相続財産が相続人に引き継げることになります。この無税スキームをつぶしたのが相続税法66条4項の規定です。上記の場合には10億円をもらったのは医療法人であってAの子供ではないため(実質的にAの子供がもらったようなものですが…)その医療法人を個人とみなして贈与税が課税されることになります。相続税法施行令33条に贈与税が課税されない要件が掲げられていますが、親族要件1/3以下など厳しいものになっております。