日本でいちばん大切にしたい会社

あまりにも有名な本なので名前だけでも知ってる人も多いのではないでしょうか。この本は法政大学の教授が全国6000社以上を訪問し、いい会社には共通点があると気が付きます。第1部では経営者が心すべき5人の人に対する使命と責任を掲げています。第2部では、いい会社として5社を厳選して紹介しています。5人に対する使命と責任を果たすための行動のことを、経営と定義しています。5人の1番目は社員とその家族を幸せにすること。2番目は外注先や下請先の社員とその家族を幸せにすること。3番目は顧客を幸せにすること。4番目は地域社会をしあわせにし活性化させること。5番目は株主、出資者を幸せにすることです。そして、業績ではなく、継続する会社を目指すべきだと言っています。業績や成長は継続するための手段にすぎないとも言っています。企業を継続させることこそ社会的使命だそうです。

第2章では、多くの会社を訪問した著者がこれぞ、いい会社だと思う会社を5社紹介しています。その中の2番目に紹介した寒天メーカーの会社は48年間増収増益で50年間一度もリストラをせず、100年カレンダーを作り遠くを見通す経営をしてきました。寒天の市場は決して成長マーケットとは言えません。実際寒天の生産量は右肩下がりです。でもこの会社は寒天をベースにしながらも時代に合った付加価値をどんどんつけながら、同業者と戦わない経営を行い商品価値を高めています。経営方針は3つ「無理な成長は追わない」「敵をつくらない」「成長の種まきを怠らない」ということ。

ここでビックリエピソードが書かれていました。この会社は「かんてんぱぱ」という商品を売っており、この一種類を大手スーパーが「是非うちで売らせてほしい」と言ってきました。北海道から九州まで展開している大手スーパーの注文を受ければ、1年間で何億円、何十億円にもなりますが、それをすべて断ったといいます。それは経営方針の一つ「無理な成長は追わない」という信念に基づいた判断でした。景気や流行を追うと好況のときには設備投資などにお金をかけたり人を雇ったりします。しかし不況になるとそれが過剰投資になりリストラしたり商品の値段を下げたりして苦しむからだといいます。私もどちらかというとこのような信念を持っていますが、通常売上は来るもの拒まずなのではないでしょうか。それをブームはいつか去る。その時のダメージを考えると売り上げも取らない方が良いという経営判断はなかなかできるものではありません。なんだか凄い会社でした。その他にも、リスクのある仕事は、あえて断るなど、短期の業績に着目せずに100年の長いスパンで会社を発展させていこうという理念は「おみそれしました」という感じでした。

不動産取引が非居住者である場合の注意点

「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています(国税庁のHPより)例えば、A株式会社がBさん(非居住者)から1億円で土地を購入した場合、A株式会社はBさんに1億円を支払う義務を負うわけですが、Bさんが非居住者なら20,420千円(1億円の20.42%)は税務署に源泉徴収として納税し、残りの79,580千円をBさんに支払います。ところがA株式会社がBさんに1億円支払ってしまうと、税務署はA株式会社に源泉徴収の義務を怠ったとして、20,420千円の支払いを命じます。

ここまでなら、そうか外国人と土地取引をしている場合に注意すれば良いのかと思います。ところがこういう事例があります。Bさんが以前は日本に住んでいましたが、渡米して米国籍を取得して日本には米国発給の旅券で入国して、たまに日本に来るものの日本の滞在期間は数か月というものです。契約書には日本の旧住所などを記載している場合などがありますので、注意が必要です。例えば、売買取引口座が外国口座だった場合などは、まず非居住者であると考えて良いでしょう。なお、これはA株式会社が会社だったから源泉徴収義務者になるのであって、Aさんというサラリーマンの個人でしたら、源泉徴収の義務はありません。

イノベーション

イノベーションとは、物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。一般には新しい技術の発明を指すと誤解されているが(技術革新)、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指す(Wikipediaより)とあります。イノベーションの類型としては
1.プロダクト・イノベーション=新しいまたは大幅に改善した製品又はサービスの市場への導入
2.プロセス・イノベーション=自社内における新しいまたは大幅に改善した生産工程,ロジスティクス・配送方法・流通方法,又は保守システム・購買・会計・コンピュータのうち,いずれかの導入
3.組織イノベーション=自社内における業務遂行の方法や手順に関する新しい業務慣行,権限の委譲や仕事の割り振り・編成など職場組織に関する新しい方法,又は他社や他の機関など社外との関係に関する新しい方法のうち,いずれかの導入
4.マーケティング・イノベーション=自社内における製品・サービスの外見上のデザインの大幅な変更,若しくは,新しい販売促進のための媒体・手法,販売経路,又は価格設定方法のうち,いずれかの導入 があります。

文部科学省の「全国イノベーション調査統計報告」によると、イノベーションを実施している企業は約40%でその中でも組織イノベーションを実施している企業が多いようです。プロダクトイノベーションは一番少なく12%程度の実施率でした。  

ザ・コンサルタント

会計士が主人公だったので、ちょっと興味があり観に行きました。ただ、昼は会計士、夜は殺し屋とあり得ないサブタイトルがついていたので、会計士として食べていけるのに殺し屋はしないでしょう。とちょっと眉唾でしたが・・・実際に観ると、会計士として働いているけど、積極的に殺し屋業をやっているわけではなく、自己防衛の一環でやっているという感じだったので安心しました。

主人公は自閉症で、ある部分に天才的な才能を発揮するのですが、それが会計士としての才能として開花されています。手の込んだ粉飾や会計操作もたぐいまれな才能で発見します。でもその才能から命を狙われます。会社の内部で働いていた女性がはじめに発見し、会計監査を頼んできたのです。彼女が発見したのは氷山の一角でものすごい金額が粉飾されていました。

会計士と彼女はそれを公にしたくない連中から命を狙われます。会計士は自己防衛のため幼い時から父から格闘技や射撃の訓練を受けており、自分だけなら十分に守れますが彼女も守ります。やはり、男は強くなくちゃね。と観ているうちに彼が魅力的に移り変わっていくそんな映画でした。

EBITDA(キャッシュ利益)

日常会話では税理士でさえあまり使わないEBITDAですが、大学院の時は頻繁に授業に出てきました。まず、読み方ですが、M&Aの授業(M&A専門の会社の社長が講師でした)では「エビター」と言っていました。財務分析の授業(コンサルタント会社の経営者が講師でした)では「イービットディーエー」と言っていました。そしてキャッシュフロー会計の専門の教授の授業では「イービットダー」と言っていて、学ぶ立場から言うとどれが本当なんだ!と迷いましたが、どれでも実務で使われている言葉のようです。日本語ではそんな感じで色々呼ばれていますが、すべてEBITDAのことです。

EBITDAとは、税引前当期利益+特別損益+支払利息+減価償却費のことでEBITDAは財務分析や企業価値算定の時によく用いられます。キャッシュ利益とも呼ばれています。固定資産が多く減価償却費が大きい組織は利益があまりでませんが、キャッシュ利益で見ると結構良いという場合があります。また、M&Aなどで企業を買収する場合などもキャッシュで考えて利益になるかという点を重要視します。ですからキャッシュ利益がM&Aや企業評価の際、または国際間企業分析の際、多く用いられるのですね。

認定医療法人制度改正

認定医療法人制度とは、持分の定めのある医療法人が持分の定めのない医療法人に移行するための制度ですが、法人に含み益がある場合(内部留保がある場合)原則として移行時に医療法人に贈与税がかかっていました。厚生労働省は持分の定めのない医療法人に移行させたかったのですが、このみなし贈与税が足かせとなって移行が思っていたより進まなかったのです。

認定医療法人制度は平成26年10月に始まった制度で平成29年9月までがその期限となっていましたが、この度の税制改正で3年間の延長がされ、平成32年9月までの制度となりました。しかも、移行時の贈与税を非課税とするという太っ腹な制度です。ただ闇雲に非課税とするのではなく、摘要要件を定めました。移行計画の認定要件を満たし、厚生労働省の認定を受けること。移行後6年間、認定要件を満たしていること。です。

認定要件は、⓵社員総会の議決があること。⓶移行計画が有効かつ適正であること⓷移行計画期間が3年以内であること⓸法人関係者に利益供与しないこと⓹役員報酬について不当に高額にならないよう定めていること⓺社会保険診療に係る収入が全体の80%以上などです。⓵~⓷はもともとあった要件ですが、⓸~⓺は新たに追加された要件です。以前の親族1/3要件などがなくなれば、非常にやりやすくなるのではないでしょうか。ただ、産婦人科などは社会保険診療報酬収入が全体の80%以上にはなりませんから、そちらについても救ってほしいものです。具体的な細かい要件についてはこれからです。いずれにしろ、これは衝撃的な改正です。秋ごろに細かい要件がでると思いますので注目ですね。

税理士業の業務変化

私が税理士の業界に入ったのは、税理士になる前の今から20年位前です。新人は何をやるかというと1日中パンチャー(会計入力)の仕事です。決算期になると科目内訳書の作成などもやっていました。でも多くは集計業務でした。それを上司に渡して上司は手書きで税務申告書を作成するという感じです。今はどうでしょうか?税理士事務所は今でもパートさんに会計入力をやってもらう事務所も多いですが、当事務所は会計入力は在宅勤務・もしくは外注に依頼しています。

税務申告書は流石に税務ソフトで作成し、昨年までは紙ベースで印刷して特定記録郵便で発送していましたが、昨年の夏から電子申告にしています。昨年からマイナンバーが強化され確定申告を紙ベースで提出すると、納税者のマイナンバー・マイナンバーを証明するコピー・存在を証明するコピーなどが必要で、電子申告ならマイナンバーだけで済むからです。郵送ですとマイナンバーが流出する可能性も高まりますし・・・

私のような考えの税理士は多いようで、今年は支払報告書(住民税)や償却資産税の申告も電子申告でやり始めた事務所が多く、なんと1月31日にはelTax(地方税の電子申告)がサーバーダウンして2月1日まで送れないという事態になりました。当事務所は早々と終わらせていたので無事でしたが、多くの事務所が1月中に送れないということになったようです。ただし、原因がサーバーダウンなので2月1日になっても、1月中に申告したとみなされるとの事でした。

今年の確定申告もそんなことになりそうですね。当事務所でも確定申告の電子申告は初めてなので不測の事態に備えて、早め早めに対応していきたいと思います。税理士業界も私が業界に入ったころとだいぶ変わってきました。

老人ホームの駐車場の固定資産税

住宅や併用住宅(居住部分の割合が1/4以上である家屋に限る)の敷地としての土地は固定資産税が軽減されています。住むための住宅の土地の固定資産税を軽減するというのは理解しやすいと思います。ですから有料老人ホームの建物の敷地とされている土地は固定資産税が軽減されています。では有料老人ホームの駐車場はどうでしょうか?この度、都税事務所は駐車場として使用されている部分に関しては軽減対象にならないとして、固定資産税を賦課決定してきて裁判になり、東京地裁で判決がでました。

敷地の用に供されている土地であるかどうかは、土地と専用住宅又は併用住宅としての家屋と一体のものとして利用されているかどうかということで、本件の土地は供用住宅である家屋を維持し又はその効用を果たすために使用されている一画地の土地に含まれることから、敷地の用に供されている土地と認められ減額の対象となるという判決がでました。(平成28年11月30日東京地裁)

会社役員賠償責任保険(D&O保険)

株主代表訴訟で役員が敗訴して損賠賠償請求された場合の損害を補償する保険を会社役員賠償責任保険(D&O保険)といいます。以前は株主代表訴訟担保特約の保険料を会社が負担した場合には、本来は役員本人が負担すべきものを会社が負担したということで、役員個人に対して給与課税されていました。

今回、会社法の解釈が明確化され、取締役会の承認に加えて社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意(又は社外取締役全員の同意)の取得の手続きを行えば、会社が株主代表訴訟時負担部分に係る保険料を会社が負担しても、役員個人に対する給与課税はされないということが明らかになりました。国税庁のホームページにも公開されています。ご参考までにhttp://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/160218/index.htm

たのしい不便


この本を見たとき、「たのしい」と「不便」は相反する言葉な気がして、妙な違和感を覚えたのです。そうしたら、とても気になってしまって、つい買ってしまいました。この本は毎日新聞の記者が書いた本で、不便を積極的に経験した体験談を書いたものです。月毎に不便を実践していってその体験や感想を綴っています。実践した不便は、会社まで電車を使わずに自転車で通勤する。とか、エレベータを乗らずに階段を登っていくとか、この本の帯にも書いてありますが、それらを実践することによって体重は減り、お金は残っていくのです。なぜなら今までより運動量が増え体が引き締まり、通勤手当が浮くのでお金は残るということでした。

でも、この本はその程度のもので終わりません。はじめは自分ひとりで不便を実行して家族を巻き添えにしないという決意で始めます。ところが、家族が協力するようになり、畑を借り野菜を栽培するようになるころから家族(特に子供たち)が協力し始めます。しまいにはカルガモを使った無農薬の米を栽培し始め、素人の稲作に地域の人も見かねて協力し始めます。その道のプロ(農家の人達)も巻き込み大昔不便だったころの地域の人々達が助け合って生きていた時代のような経験をします。

なんだかとても温かい気持ちになる本でした。不便だった時代は隣近所みんなで協力しあって生きていました。でも現在は便利になって特に協力しあわなくても個体でも生活できるようになっています。隣の部屋に住んでいる人の顔も知らないというのも珍しくありません。その分人々の交流や家族の繋がりも希薄になってきたのではないでしょうか。そう、昔は個体では生活できず協力しあわなければ生きていけない世の中だったのです。便利さと希薄さは実は表裏一体なのだということを思い知らされました。とても良い本です。お薦めです。