医療法人の基本財産

医療法人の財産は、大きく基本財産と運用財産に分けられます。基本財産とは、医療法人設立時に土地や建物とすることが多いです。医療法人設立時には、病院の土地や建物は基本財産とすることが望ましいと県などが言っていることから、意味も分からず、病院の土地や建物を基本財産に設定している医療法人もあります。

基本財産以外の財産は運用財産となります。何が違うのかというと、基本財産は処分したり、借入金の担保にするときは、理事会(評議委員会があれば評議委員会)の決議が必要です。また、理事会の決議を経た後、所轄庁の承認も得る必要があります。定款変更認可申請書の提出も必要なのです。

ここまで書くと、基本財産は処分するのが大変だなと思うと思います。その通りで、理事会の決議を経て所轄庁(県など)の承認を得るためにも理由づけが必要です。そのため処分や担保の設定に時間がかかります。

それでは、基本財産の設定は必ず必要なのでしょうか?答えは必要ありません。所轄庁も土地や病院建物は基本財産とすることが望ましいとしながらも、それを強制することはできません。借入金の担保の設定など、時間が勝負な場合もありますので、医療法人設立時には(その後設定することはないと思いますが)できるだけ、基本財産は設定しない方が後の運用がスムーズになります。

医療法人の会計基準

医療を営む組織はその解説主体によって会計基準が定まっています。

国立病院は、独立行政法人国立病院機構会計規程というものがあります。

地方公共団体立病院は、企業会計原則や地方公営企業法によっています。

社会福祉法人は、社会福祉法人会計基準があります。

公益財団法人・公益社団法人については、公益法人会計基準があります。

では通常の医療法人はというと実は制定されていないのです。
ただ、病院ですと、病院会計準則によりますし、介護老人保健施設ですと、介護老人保健施設会計経理準則があります。また、訪問看護事業所は、指定訪問看護会計経理準則によることとなります。

株式会社の医療法人への拠出

株式会社は医療法人に対して基金を拠出することは可能でしょうか?

結論からいうと可能です。ただし、拠出したからといってその医療法人の社員(民法で言う社員です)になることはできません。社員は自然人でないといけないからです。社員になれないのですから社員総会で議決権を有することもできません。

基金の説明は、2011.1.19「医療法人における出資と基金」や2011.2.4「医療法人における基金の返還」のブログでお話しましたが(カテゴリー医療法人)、基金には利息や配当がつかない劣後債となる為、その株式会社が医療の開発などをしていて医療法人を媒体としないと自社の研究の成果が提供できないなど関係がある場合なら良いのですが、何ら関係のない事業ですと、株式会社の財産に損害を与えると認定され会社法に抵触するおそれがあります。




浴衣5回目です。古典柄が続いたのでちょっと爽やかな感じで花火大会に行きました。

医療法人の役員報酬

医療法人の役員報酬についてお話します。税法上の役員は使用人兼務役員になれる者(定額給与と変動給与が支払える)と使用人兼務役員になれない者(原則として定額給与のみ)があります。

医療法人の役員(理事や監事)はどう分類されるのでしょうか?

まず、使用人兼務役員になれない者(原則定額給与)は、理事長、副理事長、監事、常務理事、専務理事、会長です。

使用人兼務役員になれる可能性のある者(変動給与を支払える)は、院長(理事長等である場合は駄目)、副院長、看護師長、薬局長、事務局長です。院長が理事長と親族でない場合は殆んどの場合、認められています。



知り合いの税理士から、ブログについて、堅いよね。と言われました。このスタンスは変えるつもりはありませんが、たまには柔らかさをだそうと思い、今月と来月は浴衣を着よう月間として、何回着れるか挑戦してみます。今年初めての浴衣です。


医療法人の利益相反取引

医療法人とその医療法人の理事長との取引は利益相反取引といいます。例えば、理事長が所有する土地を医療法人が病院の敷地として購入したりする場合、理事長が譲渡所得がかかるのを嫌がり低額で譲渡したり、それとは逆に二束三文の土地を高額で譲渡する危険が生じます。このように理事長と医療法人との利益が相反する取引のことを利益相反取引といいます。

利益相反取引を行おうとするときは、主務官庁(県など)に対して特別代理人を選任して申請しなければなりません(医療法46条の4⑥)理事長以外の理事が医療法人と取引する場合は特別代理人申請は不要です。

なぜ理事長との取引のみが特別代理人の選任が必要なのかというと医療法人は株式会社等と違い理事長のみが代理権を有しているからです(医療法46の4①)

では特別代理人は誰がなれるのかというと、誰でもなれますが、主務官庁はその者が特別代理人としてふさわしいかどうかを判断するので、その選定には明確な理由が必要です。

特別代理人は何をするのかというと、その取引が適正な取引であることを証明しなければいけません。

社会医療法人

社会医療法人というものをご存じだろうか?社会医療法人は平成19年4月1日の医療法改正により新たに創設された医療法人形態で、僻地医療や救急医療、災害医療、周産期医療、小児救急医療などを行う一定の条件を満たす医療法人が自らの意思で社会医療法人に移行する医療法人形態です。

他の医療法人との違いは①公益性の高い僻地医療等を実施する。②社会医療法人債が発行できる。③収益業務ができる。というものです。

①という大変な業務を行う代わり、②のような会社でいうと社債のようなものが発行出来たり、③の収益業務(農業、林業、漁業、製造業、情報通信業、運輸業、卸・小売業、不動産業、飲食店・宿泊業、医療・福祉、教育・学習支援業、複合サービス事業、サービス業など)を行うことができます。通常の医療法人では収益事業はできません。(附帯業務・付随業務に該当するものを除く)通常の法人のやらないような業務を行う代わりに②や③の飴を与えるといった飴と鞭が顕在する病院形態です。

ですから、例えば温泉が出る病院であれば、患者に施設として入浴させるだけではなく、地域の人に温泉入浴を有償で提供することができます。ただし、社会医療法人であっても、できない収益業務があります。不動産賃貸業はできますが、不動産売買業はできません。また、社会的信用を傷つけるおそれがある武器製造業、風俗営業、遊技場などは経営できません。

医療法人の業務



桜が満開です。最近不穏な出来事が多い中、桜を見ると何故か落ち着き安らぎます。日本人ですね。今日は医療法人が行える業務についてお話しようと思います。

医療法人は病院や診療所の経営という公共性の高い業務を主たる業務とするため、業務範囲は厳しく制限されています。

まず、医療法人は病院、診療所又は介護老人保健施設の運営をしなければなりません。施設を有しないで電話相談だけというのはできません。この施設の運営を本来業務といいます。

では、本来業務以外は何ができるのでしょう。本来業務以外の業務は付随業務(本来業務に付随して実施する業務)と附帯業務(医療法第42条)を行うことができます。

付随業務とは、例えば病院内にある売店、敷地内の駐車場業、当病院への患者の無償搬送などが該当します。病院外で行う売店や敷地外での駐車場経営、病院以外への患者の無償搬送は付随業務に含まれないので注意が必要です。

付随業務は定款変更等はしなくてもかまいません。

附帯業務とは、医療法第42条で定まっていて、たまに改正されます。こちらは限定列挙となります。http://www.houko.com/00/01/S23/205.HTM#s6

また、附帯業務は本来業務が存在して初めて認められるもので、本来業務を行わず附帯業務のみを行うことはできません。なお、附帯業務は付随業務と違い、定款変更(定款又は寄付行為に記載する必要がある)を要します。

医療法人における認可と許可

医療法人の事務手続き上、認可のものと許可のものがあります。
認可と許可はどうちがうのでしょう?

認可は、要件を満たしていれば主務官庁は必ず認めなければならないものです。例えば、設立認可の申請(医療法第44条)や定款又は寄付行為の変更認可の申請(医療法第50条)などがあります。

それに比し、許可は法律上の要件を満たしていたとしても、主務官庁が不適切であるとしたときは許可しないことができます。例えば、開設許可申請(医療法第7条)や使用許可申請(医療法第27条)などがあります。

ですから、申請を行う時は認可なのか許可なのかを把握して、許可のものはよく詰めてから申請する必要があるのです。

医療法人における基金の返還

前回カテゴリー”医療法人”でお話しました基金ですが、定款の定めにより返還することができます。定款にどう書かれているのかがポイントになりますが、殆んどの場合、モデル定款と同様と思われますので、定款がモデル定款と同じだったということを前提にお話しします。

貸借対照表上の簿価純資産額(純資産の部)が下記の合計額を超える場合にのみその超過額を返還額の限度額として、基金の返還をすることができます。

①基金(代替基金も含む)
②資本剰余金
③資産につき時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額

例えば、帳簿純資産額(純資産の部)が20,000千円で基金が10,000千円、代替基金が2,000千円、資本剰余金と時価評価額の増加が0円とした場合、20,000千円-(10,000千円+2,000千円)=8,000千円なので8,000千円以下の返還なら行うことができます。基金のうち半分の5,000千円を返還することとした場合の仕訳は下記の通りとなります。

(借方)基金         5,000千円  (貸方)現金預金  5,000千円
(借方)繰越利益剰余金 5,000千円  (貸方)代替基金  5,000千円

医療法人における出資と基金

出資は持分の定めのある社団に対する株式会社でいうところの資本金と同じ概念になります。医療法人側は出資金となり、出資した側は財産権を有し、その医療法人が儲かれば出資持ち分の時価が増えて、払戻しを行う時、または相続の時は当初出資した価格より高い金額で評価されることになります。逆であれば、出資した金額より低い評価になり、株式会社でいうところの株のような性格です。

基金は持分の定めのないものに拠出されるもので、医療法人側は出資金と同じく純資産の部に基金として表示されますが、拠出した側は時価がどんなに上がっても時価で払い戻すことはできません。利息や配当も付されることはなく、あくまでも拠出した額を限度として払戻しを受けることができますが、他の債務(例えば買掛金等)に劣後しますので、満額返ってくるかどうかの保障もありません。純資産の部に記載され、拠出した側は資産性を有しますが、その性格は劣後債権となります。