TOC(制約条件の理論)

TOCとはTheory Of Constraintsの略で、日本語では「制約条件の理論」のことです。このことは過去のブログ(カテゴリー:本→ザ・ゴールやザ・クリスタルボール)でもお話しました。企業の目的はお金を儲けることであって、その実現のためにすべきことは次の3つです。

①スループット(売上高から資材費などを差し引いた直接利益)を増大させる。
②総投資額(在庫や投資)を低減する。
③資材費以外の総経費(固定費)を下げる。

このなかで一番重要なのは、スループットの増大です。②と③は理論的限界があるからです。もっとも重要であるスループットの増大を妨げているのが、制約条件です。制約条件は市場が制約条件となる場合(商品の競争力が弱いために市場で商品が売れない)や企業内に制約条件がある場合(消費者に受ける商品を開発しても顧客が購入したい時に用意できない)があります。制約条件の理論は大きく2つの手法があり、一つは「生産改善の手法」でもう一つは「思考プロセス」の手法です。思考プロセスの手法は次回に委ねるとして、今回は生産改善の手法についてお話します。これは次の動作を繰り返し行うことで改善していきます。 1.制約条件となっているもの(ボトルネック)を発見する。→2.その部分を最大限に活用する(フル回転)→3.ほかの条件をこの制約条件に従属させる(合わせる)→4.制約条件の能力そのものを上げる(ここには投資しても良い)→5.惰性に注意しながらこのプロセスを繰り返す。

はじめは1から3を繰り返します。それでも生産が間に合わない状態になれば、4を行います。注意しなければならないのは4を行うことによって、今までのボトルネックがボトルネックでなくなる場合があるのです。そうした場合、また、1に戻り、新たなボトルネックを見つける必要があります。

損益分岐点


損益分岐点(金額)とは、費用と収益が同額となる。つまり、利益がゼロとなる費用と収益の額をいいます。

例えば、売上高が売価1,000円×500個=500,000円で、変動費(売上高に連動してかかる費用)が単価400円×500個=200,000円で、固定費(売上等にかかわらず定期的にかかる費用)が150,000円とした場合、

変動費÷売上高が200,000÷500,000=0.4となります。従って、150,000÷(1-0.4)となり、250,000円が損益分岐点金額となります。つまり、250,000円を超えるの売上があれば黒字となり、それ以下の売上しかなければ赤字となるという金額です。

ROEとROA


有名な業績評価指数にROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)があります。

ROEの長所としては、計算が比較的簡単であり理解もし易い。株主重視の指標であるため株主重視の姿勢をアピールできる。認知度が高く他社との比較も容易である。という半面、短所としては、内部資本金制度を採用しない限り組織単位でROEを算出することができない。株主資本コストやキャッシュフローを考慮していない点などが挙げられます。

ROAの長所としては、計算が比較的であり理解し易い。資産(借方)が分かれば企業内組織でも算出が容易である。株主だけでなく債権者を含めた資金提供者の視点から評価できる。認知度が高く他社との比較も容易である。資産の有効活用を促すことができる。という半面、短所としては、株主資本コストやキャッシュフローを考慮していない。総資産の圧縮による縮小均衡に陥る可能性がある。率で判断するため将来の意思決定に不合理な決定を導くことなどが挙げられます。

経営理念 ビジョン 戦略

経営理念は、組織の構成員が共用すべき価値観を明確にしたもので、組織創業の哲学であり、その組織が存在することの意義を社内外の利害関係者に宣言するものです。

ビジョンは、未来に向けて組織の指針となるイメージ・価値・方向性・目標などを言葉で表現したものです。

戦略は、企業レベルの戦略や機能分野ごとの戦略など様々ですが、他社と差別化をする要因のことです。

これらは必要でしょうか?私は多くの経営者を見ていて、またビジネススクールにも通って、両者にかなりの温度差を感じました。大きな企業では経営理念・ビジョン・戦略をホームページで公開したりしていますが、中小法人ではほとんどこのようなことは考えていません。中小法人で必要なのは、日々の資金繰りであり、利益である。そんな絵に描いた餅を掲げて何になるんだと言う経営者もいます。また、ビジネススクールで学ぶ人たちは、これらは起業の原点であり、これらがない法人は存在意義さえないと言い切る人もいます。

この温度差はなんでしょう?おそらく、起業すると日々の現実的な事柄(例えば契約とか期限とか資金繰りなど)が重要になって、ふわふわした目に見えない経営理念などは綺麗ごとにしか見えなくなったりするのでしょう。多くの中小企業の経営者がそうです。日々、生きることに必死なのです。

ではこれらはなくても良いでしょうか?経営理念等はあるとき重要な意味を持つことがあります。組織が迷った時、その方向性を導く指針であるときもあります。組織としてブレずに、誠実な経営をするために時として絶大な威力を発揮します。

組織をお持ちの方は一度立ち止まってじっくり考える時間も必要かもしれません。

企業としての女性の活用

女性の政治参加や経済界における活躍、意思決定に参加できるかどうかを表す指数として、国連開発計画(UNDP)が導入したジェンダー・エンパワーメント指数(gender empowerment measure)略称GEMがあります。これは、国会議員、専門職・技術職、管理職など歴史的に男性が先行してその比率の大多数を占める職業の中の女性の割合と、男女の推定所得を用いて算出するもので、女性がもともと大多数を占めていた職業や、女性固有の能力である出産などは評価の対象外です。日本は先進国の中でも最下位の58位と出遅れています。

日本企業は女性にあまり投資をしません。会社では重要な仕事を担えません。従って育児休暇などを充実させて女性をつなぎ止めようとしないのです。一度仕事で波に乗ってきた女性は仕事か家庭(育児)かの選択を迫られキャリアの切断をしたくないと考える女性は子供を生むことを諦めます。そして少子化が進行する。日本にとってこれは悪循環となります。

日本は残念ながら石油などの資源がありません。従って日本のGDPを上げるにはヒューマンリソース(人的資源)を活用するしかありません。日本人は勤勉で誠実であるという国際競争優位性であるヒューマンリソースの活用しか生き残る道はないのです。

また、日本の女性の就業率は国際的にみても低いものとなっております。就業率の高い国であるスウェーデンはジェンダー・エンパワーメント指数も世界一であるため、ジェンダー・エンパワーメント指数の上昇は就業率に大きく関わってくるということが言えそうです。

市場リスクプレミアム

市場リスクプレミアムとは、投資家が市場に投資した場合に期待する期待収益率から無リスク金利(10年国債利回り)を控除した利回りの差のことで、日経新聞に載っている数値からその計算をする方法を紹介します。7月10日に記載されていた9日の主要指数を使いました。




RPM=市場リスクプレミアム
DPR=配当利回り
PER=株価収益率
PBR=純資産倍率
Rf=無リスク金利(リスクフリーレート)

これを計算した場合、2.04%+1.08/17.01×(1-2.04%×17.01)-1.15%=5.036%となります。
①まず括弧書きの中を計算すると、0.652996になります。それに括弧の外の掛算×1.08÷17.01を計算して0.04146になります。これにトップの数値2.04%をプラすして、6.186%(%の小数点の扱いに注意)です。ここから最終値の1.15%を引いて、5.036%となります。

この意味は本日投資をするとしたら5.036%以上の収益が望めないような投資はするべきでないということを意味します。例えば3%くらいの収益しか望めないのであれば、高いリスクをとって投資するより国債を持っていたほうがましという判断です。

BCG型PPM

PPMには、BCG型PPM、GE型PPM,PLC型PPMなどがありますが、今回はBCG型PPMについてです。BCG型PPMはボストンコンサルティングが発案したPPMで他のPPMに比べ大雑把で、欠点もありますが、理解しやすいので有名なPPMです。




金のなる木・・・名前の通り金のなる木で資金が入り、支出は少ないです。ただ、それに甘んじていると過剰適応のわなにはまります。

花形・・・市場成長率が高く将来の成長が見込まれますが資金流出が多くたくさんのお金が必要です。

負け犬・・・撤退することも考えますが、競争相手がいなくなり儲かる見込みもあります。自社が持っている資源(コアコンピタンス)合えば留まり、合わなければ撤退します。

問題児・・・拡大か撤退を考えなければなりません。成長が激しい市場なのでさらに資金をつぎ込み花形となるか傷が浅いうちに撤退するかという選択です。

BCG型PPMはキャッシュフローからみた資源配分方法で、市場シェアの線は資金の流入を表し、市場シェアが大きいほど、お金が入ってきます、また、市場成長率線は資金の流出を表し、市場成長率が大きいほど資金が流出(投資が必要)します。
BCG型PPMの欠点としては、業界特性を反映していない点と、ROIからみた資源配分を考慮していない点などがあげられます。

キャッシュ化速度

最近、様々な法人の財務諸表を見て感じることは、相対的に売上が落ちているという点です。売上が落ち込む中で、財務諸表を良くするためにはどうしたら良いでしょう。実は資金繰り(キャッシュフロー)を改善することが、企業の財務諸表を良くする方法となります。

財務諸表を良くするためには、キャッシュ化速度を速めることが最も改善する方法です。

キャッシュ化速度を早める方法は、売掛金はできるだけサイトを縮め、、買掛金はできるだけサイトを伸ばし、棚卸はできるだけ少なくします。

実際のところ売掛金と買掛金は相手があることですから、調整は困難かもしれません。従って、棚卸を極力少なくする方法を考えます。

①必要以上にまとめ買いをしていないか? ②適正在庫を把握しているか? ③在庫は物だけと思っていないか? という点を徹底的にチェック・改善してみることによって、1年後には見違えるよな財務諸表になります。3つ目の在庫は物だけと思っていないか?という点は、在庫は仕入れた物だけでなく、保管コストや使用していないときの時間コストなども考慮しましょうという意味です。

2010年6月のブログ(カテゴリー:本)「ザ・クリスタルボール」も関連ブログとなっています。

原価管理(増分原価の考え方)

現在、販売単価20万円、製造原価10万円の製品を50台生産販売しています。そこに特別価格で1台8万円なら50台購入するという注文がきました。この注文に関して追加的販売費等はかかりません。さて、この注文は受けますか?



通常このようなことが起こった場合、原価が10万円なのに8万円で売ったら2万円の損になるからこの注文は受けるべきでない。と考えるのが普通だと思います。本当にそうでしょうか?

売上は14,000千円となるが売上原価は7,500千円となり、売上総利益が6,500千円となるので、注文は受けるべきである。

というのが答えです。通常は販売費の中にも変動費と固定費の部分があると思うのでその分も考慮しなければいけませんが、売上原価や販売管理費を変動費と固定費に分けて考えることによって、実は利益が出る場合があるのです。固定費は追加注文が入るか否かに関わらずかかってくるものなので、追加注文を計算するときは原価に算入しないで計算することがポイントです。

追加分単体の利益は、4,000千円(売上)-2,500千円(変動製造原価)-0円(追加的販売費はかからないと問題に表示、つまり固定費)=1,500千円(追加的利益)となります。従って、この条件でも利益は充分でるのです。この計算をするには、全ての経費を固定費と変動費に分ける必要がありますが、とても有効的な判断基準となります。自分の会社でも1度お試しすることをお勧めします。

戦略

企業の製品は通常、「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」という製品ライフサイクルを辿ります。
衰退期に入ったあとはその製品について撤退するか。新たなイノベーションを加えて製品を導入するかの選択が迫られます。そのとき戦略を練らないとならないが、基本戦略には下記の3つがあります。

マイケル・ポーターが類型化する3つの戦略

1.差別化戦略
商品やサービスにおいて他社と差別して特異性をアピールする戦略のこと。このとき単に他と違うことをアピールしてもダメで顧客がそれを価値と感じる差異でなければならない。また、得意分野で差別化するのがポイントである。

2.コスト・リーダーシップ戦略
同業他社より圧倒的にコスト削減を図って低価額を実現し、優位に立つ戦略のこと。このとき利益が縮小するのを承知で低価額を実現するのはコスト・リーダーシップ戦略ではない。

3.集中戦略
上記2つの戦略をある限定セグメントや地域などに限定して行う戦略のこと。

上記の基本となるのが、差別化戦略とコスト・リーダーシップ戦略ですが、この2つの戦略を同時に行うことは通常できないといわれています。ところがこれを一緒に実現してしまうのがブルー・オーシャン戦略です。

ブルー・オーシャン(青い海)というのは、いまだ手のつけられてない青い海(つまり市場)のことで、競争が行われない市場を創造することです。具体的にいうとこれまでの基本要素に①新たに付け加える ②新たに増やす ③今までより減らす ④思い切って取り除く、事をします。

<例>10分1,000円で有名なQBハウス
これまでの理容では、「シャンプー、髭そり、ホットタオル、トリートメント、そしてマッサージや飲み物のサービス」をすることによって、付加価値を高めることを戦略としてきました。ところが、QBハウスはそれらの付加価値をすべて取り除いて、カットだけをすることによってコストを下げ、事業に成功しています。

ここで、今までより減らしたり、取り除いたことは、様々なサービスであったり、担当制であったり、価額でした。また、付け加えたり、増やしたことは待ち時間の減少であったり、時間的ストレスの減少、エアーウォッシャーシステムの導入などです。

このように、いままであった通常の戦略と逆の戦略を行うことにより、これが他社との差別化となり、事業が成功する例は沢山あります。